小説  

 

 
       第7話2

霧島
戦記

 第8話2

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遠くで爆発音が聞こえる。
いくら離島とはいえ戦闘地域であることに違いはない。

レイの持ってきた新聞はもうローランド島のことが報じられていた。
”ローランド島、謎の爆発!”
”霧島共和国での事故でテレジア観光客すくなくとも600人行方不明”
”テレジア政府、霧島共和国に宣戦布告!”
各紙とも原因は原子炉の暴走か、核兵器ではないかとも書かれていた。
宣戦布告の要因はさらなる核兵器の保有とかつて自信の利益のために戦争を引き起こした旧テレジア政府幹部たちを保護
している疑い。
霧島はとまどい、しかし余裕を見せていた。
少なくとも彼らの中ではまだローランド島は霧島領なのだろう。
フロストが倉庫から引っ張り出したTVとラジオが朝早くから10時に予定される緊急発表があると冗談交じりに繰り返して
いた。
因みに現在は9:00。
広い吹き抜けのリビングダイニングにはオレと無口な少女だけ。
20分前にPCを貸してくれと言ってから向かいに座って俺のPCでネットサーフィンしていた。
「なぁ・・・えーっと・・アヤちゃんだっけか?」
ちらっとこっちに視線をやってうなずく。
「何やってるんだ?」
「・・・・・状況把握」
「何の?」
「ネットの掲示板。」
「・・・・そうか」
「・・・・”ちゃん”付け。やめて」
そういうとだまってうつむいてしまった。
「あら・・おはよう」
ナガセさんがあくびをして出てきてアヤに目をやる。
「どう?」
アヤは動かしていた手を止め、ため息をついた。
それを聞いたナガセは暫く画面を覗き込んでいたが、直ぐに外へと出て行った。
入れ違いにフロストが入ってくる。
「何してたんだ?」
彼は巨大な双眼鏡を担いでいた。
彼はポンとそれを叩いて答える。
「ん?・・あぁ。コレか。この島の崖からローランド島を、な。」
「何か、みえた?」
アヤがそう聞くと方をすくめる。
「見えたのはテレジアの戦闘機と艦船だけだ。どうやら完全に落ちたようだな」
おかしい。宣戦されてから一日もしていないのに既に霧島共和国に進行・上陸しているだと?
霧島の哨戒船団や哨戒機などの警戒システムの性能は俺達の国のシステムほどでないかもしれないが普通は3日くらいはか
かる。。
「何が起こっているんだ?」
そうつぶやく。
「さぁねぇ。お前さんはどうするんだ?国籍をかえるか?キーの取得を格安で手伝うぜ」
「キー?なんだそれ」
そう聞くとフロストはポケットから厚さ2cmほどのカードを取り出して示す。
「キーというのはこの国の国民証兼個人識別の文字通り”鍵”だ。
納税者にのみ購入権が与えられ、国営サービスを受けることができる。
国営サービスには電気、水道、ガスから飛行艇チケットまでが含まれ、使用したサービスがキーに蓄積される。
年末にキーのチェックがあるがそのときに使用した分だけの”税金”と”国営税”が請求されるという仕組みだ。大抵民
間よりも3割ほど安いし利用者は多いぜ。」
「それって簡単に取れるのか?」
「いーや。そうだな・・キーには5種類ある。
15歳で”国民試験”を受けてパスするとレベル1キー。
成人・・まぁ20歳でレベル2キー。
レベル2を持っていて国籍を取得している状態かつレベル1取得から10年たつと、レベル3キー。
レベル3キーを取得するとクレジット会社、民間国営問わずに登録、利用ができる。
レベル4からは1年の有効期限付で国営関係者しかもてないから国民の殆どはレベル3キーだな。
レベル4は国営関係者でレベル5は長官クラスだな。」
「・・・まるでファシストだな」
私がそうつぶやくと彼は笑いながら、そのうちこの良さがわかるさ。と言って自分の部屋へ入っていった。
・・・そろそろ霧島政府の見解が聞ける頃だな。時計は正確に時を刻んでいた。