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       第7話1

霧島
戦記

 第8話1

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霧島共和国ローランド島ケープコッド空軍基地
6/2、03:20AM

暗闇があたりを包んでいる。普段なら自宅の樫で出来たお気に入りのベッドで庭の葡萄を摘む夢を見ていただろう。
「キール、右に敵の歩哨。警戒してくれ」
不意に声を掛けられた。
「何処だ?あのレーダー塔か?」
「あぁ。今は静かだが・・そろそろ来るかもナ」
40人前後いた俺の隊も今では23人に減っている。
機甲部隊にいたっては軽戦車4台と作戦指揮車1台にまで減っている。
敵は後ろの飛行艇シェルターを狙って俺達を取り囲んで攻撃の準備を着々を進めているに違いない。
俺は眠気覚ましの霧島防衛隊特製、即興眠気覚まし”かぐわしき精力剤”を飲んで気を引き締めた。
厨房はコーヒーと薬草の臭いで充満していることだろう。
材料はコーヒー以外毎回変わる上に得体の知れないものが入っていることで有名だがよく効く薬だ。
<<支援開始予定時刻まで40分。各員撤退戦用意。攻撃のタイミングはこちらで指示する。それまでは発砲は控えろ>>
隊長が無線で呼びかける。
次の瞬間強い光に幻惑され、俺は視界を失った。
「伏せろぉぉぉっ!」
誰かが叫ぶか叫ばないかのうちに雷のような音が響き、後ろから土と石が飛んできた。
「敵が攻撃を開始!応戦しろっ」
「正面に戦車を確認!数は・・6台です!」
<<持ちこたえるんだ!直ぐに鳥が来てくれる!>>
「機甲部隊をやらせるなっ!彼らは最後の砦だ」
「ばかいえっ。俺達にはこの穴しかないんだぞ?どうやって支援するんだ!?」
遠くからキャタピラと銃撃の音が聞こえる。
このまま地面にもぐっていてもやられるのは時間の問題だ。
「支援はまだなのか!?このままではやられる一方だぞ!」
「もう少しだ。もう少しで夜は明ける!」
そう勇気付ける。
「えーぃっ!もう我慢できん!撃つゾ!」
<<20秒後に一斉に対戦車ロケットで攻撃せよ。側面より機甲部隊が支援する>>
静止するように隊長が言った。
「20秒も待ってられルカ!」
既にロケット砲を構えている友人をなだめる。
「落ち着け。攻撃のタイミングが重要なんだ。」
そういいつつも俺は今にでも飛び出しそうなほど緊張している。
機銃掃射が続き、俺達の隠れている塹壕の端を削っている。
<<射撃用意!構えーっ・・・・・撃ぇっ!>>
隊長の合図で体を乗り出し、まともに狙いをつけずに素早く発射する。
軽い反動と共に火を噴きながら矢が飛んでいく。
一斉攻撃のため20発の火の曲線が敵戦車に迫っていった。
エンジン音が盛大に響きわたる。
ロケット弾から逃れられないと気づいた数台の砲身が火を噴き、次の瞬間盛大に爆発してスクラップとなった。
近くの塹壕で花火が爆発し、そこにあった全てを吹き飛ばした。
<<着弾を確認、敵戦車3台撃破!いい命中率だ。後は鳥に任せろ。>>
白くなり始めた上空を轟音と共に3本の白い矢が通過し地面に突き刺さるのが見えた。
「航空支援だ!助かった!」
誰かが叫ぶ。俺は周りに生き残った仲間たちと歓声をあげ、格納庫に急ぐ。
水平線は既に輝き始め、雲が晴れ始めてきている。
光が軍艦と戦闘機のシルエットを浮き彫りにしていてたものしく、神々しかった。