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       第8話1

霧島
戦記

 第9話

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霧島共和国本島霧島、セントラルタワー2階大会議室
6/2、07:13AM

「おはよう。朝早くから呼び出してすまない。」
シルフ長官はやんわりとした口調で各行政の各課代表者と長官、各島の統領、そして私を含めた彼の側近に向けて話し始
めた。
セントラルタワーの1階層全てを使用した巨大なホールも、その不安と戸惑いを開放しきれず、空気は重い。
「皆もすでに知っていることかもしれないが、昨日6月1日午後3:00にテレジア連邦共和国はわが国、霧島共和国に宣戦布
告、同時攻撃を開始し既にローランド島はほぼ制圧されている。宣戦理由は・・」
「警備艇は何をしていたんだ!膨大な予算は何に使っていたんですか!?」
話を割って野次が飛ぶ。むっとして防衛軍海戦水上隊参謀という立場から言い返そうとすると長官がそれを手で静止した

「・・宣戦理由は我が国が科学的確証もない技術にて核融合炉を開発、保有していること。
その技術をザフト公国、タロン共和国に売り、核戦争の可能性を高めている可能性があること。
わが国首都に一般外国人の入場が禁止され、さらに国民識別システムによる差別と秘密主義とが蔓延し、その中で旧テレ
ジア政府幹部6人をかくまっている可能性が高いこと。
以上3つの理由で宣戦を受けた。」
怒号とため息が会場に広がった。
直ぐに長官はマイクを手に取る。
「わが国は・・・」
叫ぶように言った。会場が静かになる。
「この宣戦布告を受け、内容を否認し視察を提案したがテレジア側が拒否した。・・よってわが国は徹底抗戦の構えを取
るつもりだ。その意思は私の一存では決められない。どうか、私たちの仲間たちの代表たちよ。急なところ判断しかねるかもしれないが、投票をお願いしたい。時間はもうないのだ。」
その意思を示すように強い語調だ。
もし、徹底抗戦が否決されれば直ぐに国民をテレジアの国民として・・領土もろとも引き渡すことになるだろう。
会場にいた一般の見学者にも投票の一枚の紙が配布される。
どよめきと苦悩の中で、刻一刻とこの国の動きが決定されていく。
シルフ長官はその一番高い発言席のゆったりした椅子のうえで静かに目を瞑っていた。