小説  

 

 
       第6話2

霧島
戦記

 第7話2

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窓から差し込む射光で目を覚ます。
時計は6/5午前6:00を示していた。
いつの間にか一夜が過ぎ、東から光があふれ出している。
小さな丸い窓から輝く海が見える。背伸びをしてうめく。何故か体中が痛む。
「起きたか?そのじーさんを拾って直ぐに帰るぞ」
フロストが声をかけてくる。
「え?」
「ローランド島の観光は無理だ。近づくことさえ難しい」
フロストは少し振り返ってこちらを見る。
「アヤ、まだ写ってるのか?」
「・・・えぇ・・・」
少女は静かに答える。
「映ってるって・・何が?」
「あなたの仲間じゃよ。若いの。大きな船が1隻とヘリが2機。」
じーさんが答えた。
「え・・・?ぅわ・・っ・・・・」
コクピットで警報がなり理解する暇もなく急に機体が傾いた。
体にGがのしかかる。
シートベルトが体に食い込み、目の前が軽く黒くなる。
体中が突然の力に悲鳴をあげた。
やっと重力から開放される。どうやら何かに狙われているらしく、フロストは降りかかるミサイルを避けているようだ。
「フフ・・化けの皮がはがれてきたわね。」
何が面白いのかさっぱり解らん。
「テル、何処にお迎えにあがればいいんだ?悪いがゆっくり探すようなマネはできねぇぞ!」
「え・・?あぁ・・」
その言葉で我に返った俺はかばんに押し込んであったパソコンを取り出し慌てて起動した。
予定では親父が発信機でこちらに位置を知らせているはずだ。
民間のGPS会社の製品だが、戦場や機密事項のやり取りをするのに良く使っている。
さっき連絡があり、まぐろ漁船で近くに来ているらしい。
予想では丸一日かかると思ったがやけに早かった。
思ったとおり地図上に点が見える。
俺はなんとか手すりにつかまりながら揺れる機体を這ってコクピットに近づいた。
「こ、この位置だ。」
ナガセが黙って受け取り、目の前の計器に備え付けられているキーボードに座標を打ち込む。
「よーし・・・しっかりつかまってろよっ」
フロストが機体を急旋回させたおかげで昼間なのに星を見ることになった。
「っ・・・たぁ〜・・」
「若いのに情けない・・・ワシを見習え。」
シートにへばりついてたあんたに言われたくない。
俺は悪態をつきながらこれ以上体を痛めないよう自分のシートへと這っていった・・。

数分間の嵐に見舞われた船のような揺れの後、機体が大きくのけぞる。
じーさんがドアをスライドさせて開く。
そこは洋上だった。機体は海面擦れ擦れに漂っていて、向こうには一隻の漁船が見える。その上に親父が・・・・
「やっほー♪元気か〜?」
親父の姿は無かった。変わりに大きな荷物を持ったレイの姿が・・
「あら・・随分かわいい親父さんね」
「・・・・・・・」
言葉が出ない。
いやこれは夢だ。そう。夢に違いない。
「大変だったのよ?此処まで来るの」
レイが降下ロープのフックで上がってきた。
近くで水柱が立ち、機体が大きく揺れる。
またもや頭を打ちつけ、夢でないことが証明されてしまった。
隣でレイが悲鳴をあげ、倒れている。
「悪いが再開を楽しんでる暇は無いぜ。アヤ、EA(Electronic Attack)出力を上げてくれ。じわじわと砲弾が近くに落ち
てきやがる・・」
「・・・無理。これ、最大出力。」
アヤはしゃべるのが苦手のようで片言でしゃべっている。
「っっっっちぃっ」
砲弾が至近に落ち、再び機体が傾く。
閉められる直前のドアから翼端のスタビライザーが海面に突っ込むのが見えた。
その瞬間エンジン音が一気に高くなり、俺の体ははシートにめりこむ。

「親父はどーしたんだっ?」
コクピットと機体が落ちついたころレイに尋ねた。
PET−10の足は追撃者たちを軽く振り切っている。
「それがもう歳だから私に代わりに行ってほしいって。お土産もあるのよ?」
そういって彼女はかばんから数部の新聞を差し出した。
あのクソ親父・・・
酔いかけてた俺はそれを受け取ると直ぐに自分のかばんにしまう。
今読むと全力でリバースしそうだ。
「他にも色々もらってきたし、親父さんにも色々教えてらった。だからその・・」
彼女は少しうつむいて上目遣いで言った。
「足手まといとかにはならないから。」
う・・その姿勢でこっちをみるな・・
と動揺しつつも、なんとかそれを隠して答える
「わぁったよ・・・その代わり離れるなよ」
フロストがこっちをちらちら見ているのが異様に気になった。
窓からは隠れ家の小さな島が見えている。






























































EA:
ジャミングの一種。
レーダーをかく乱し、ミサイル誘導への欺瞞やレーダーを曇らせたりする。
PETの場合干渉を避けるため特定周波数で行うことが多い。