小説  

 

 
       第5話

霧島
戦記

 第6話2  TOP

俺達はローランド島から60キロほど離れた小さな島に降り立った。
腕時計は2650年6/01午後11:00を指している。
うっそうと茂った森の中に小さなヘリポートと一つのロッジが建っている。
此処は彼らの別荘兼倉庫だ。燃料や消耗品など長距離飛行で必要なものをおいておき、必要があるときに立ち寄るという

星が良く見える。夜空はまだ平和そのもので、見ていると全てを忘れることが出来る。
パソコンを起動する。
親父が島に近づけばこのパソコンで親父の位置が解るようになっている。
それまで此処で息を潜め、反応があり次第拾ってローランド島に向かう予定だ。
「一杯どうだ?」
不意に後ろから声がした。
フロストが立っている。
俺は瓶ウイスキーを受け取る。
この夜空が酒を余計にうまくさせた。
「で・・その雷。お前はどう思う?」
フロストが聞いてきた。
「そうだな。俺の目が正しければ空から降ってきた。解るのはそれとローランド島が壊滅的なダメージを受けたってこと
だけ」
淡々と答えウイスキーをあおる。
「何もかも謎って訳か」
フロストは軽く笑った。
そう、全ては謎に包まれている。真実など目に見えていても本当かどうかなど解らないのだ。真実は隠されている。いや
、隠れてこそ真実なのか。
テレジアをここ3年だけ取材してきた俺は全てを信じることは出来なかった。
だからこの一日目に見えたことはあまりにも衝撃的だった。
街中には政府の動向を示す掲示板が立ち、議会には誰でも入ることが出来、最高長官は町を二人のガードマンだけを連れ
て自由に歩く。
町は人々の言葉で埋め尽くされ、陽気なパフォーマーが公園をにぎわせる。
そこにはあまりにも風通しがいい政治と風土があった。
「・・いい国だな」
つい呟いてしまう。
フロストはちょっと不思議な顔をしたがただ満足そうに酒を飲んでいた。