薄暗い小さな部屋。此処の空気は凍りついたように冷たい。
その中に一つの球体とそれにケーブルで繋がったロッカーのような箱、『Zero』と表示されたカメラつきのモニターがおかれてる。
モニターの横にはLEDの標識があり、カウントダウンしている。
表示が0になった瞬間その球体は白い煙を吐き出しながら観音開きに開いた。
「旅はいかがでした?」
スピーカーから電子的な声が流れる。
煙の中からスーツをまとった男が軽く咳をして出てきた。
「・・あぁ・・いい旅だったよ。」
苦い表情でいう。
「それは良かった。直ぐに役立つ時が来るでしょう。計画は順調に進行しています。」
男は軽く笑い、あくびをした。
「まったく・・最悪の乗り心地だな・・まぁいい」
そういうと男は葉巻に火をつけ、煙を吐き出す。
「ゼロ・・・だったな。」
「なんでしょう?」
「この『予言』は本当なんだろうな」
少し間が空く。
「えぇ。勿論。」
それを聞くとまた煙を吐き出す。
「では少しはあてにさせてもらおう。やつらの頭はどこかおかしいようだ。」
「全くです。ですから私もあなたに協力したのです。」
「ほう・・・」
不審そうに眉をひそめる。そしてゆっくりと葉巻を口から離した。
「それで『マウス』とやらの調子はどうだ?」
「万全です。全てあなたの意のままに。」
「それは頼もしい」
男は静かに言った。
「さて・・私は『旅行』を終えることにしよう。後はいつも通りに。」
そういうとモニターに背を向ける。
「そうそう・・最後に一つだけ忠告しておこう。」
男はモニターに背を向けたまま、葉巻をくわえる。
「我々は梟よりも狡猾だとな」
画面はただ「Zero」を映していた。
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