小説  

 

 
       第2話

霧島
戦記

 第4話1  TOP

せっかく雄大な景色を見て楽しんでいたのにメーヴェさんたらいきなり急ぎの用があるって私たちを連れてエレベーターに乗ってしまった。
私たちもついていかないといけないから仕方なくのるんだけど。
なんだか凄く深いところに向かっているらしい。上の数字がどんどん小さくなっていく。
しかもなんかすっごく重い空気だし。
やっとエレベーターから出ると、そこはまるで宇宙基地のような場所だった。
「うわぁ〜・・凄いところ。此処はどこ?」
「霧島共和国国防司令センターです。わが国の国防の殆どを此処で司令しています。」
メーヴェさんがそう答えると向こうから一人の軍人が走ってきてくる。
「状況は?」
「ローランド島に何か強力な攻撃が・・町が半壊しています。」
「な・・・・」
私たち三人はその言葉に絶句する。
「そ・・それで被害は?」
メーヴェさんが詰まりながらいう。
軍人は声を絞り出す。
「ローランド島核研究所を中心に半径10キロは跡形も・・少なくとも1000人は命を失うか重症を追っていると・・・思わ
れます。」
後ろのドアが開き、最高長官が入ってきた。
「諸君、ただちにローランド近海を第1戦備態勢に・・」
「長官殿・・最悪の状況です。ローランド島に・・・」
「司令っ。大変です。モニターをご覧下さい」
そこまで言った時女性が声高に叫ぶ。
真ん中の大きなモニターにテレジア大統領の映像が映し出される。
右下のマークは・・テレジア国民放送?
『・・・・国民の皆さん。霧島共和国は20年前私たちが消し去ったはずの汚点であることがわかりました。彼らはローラ
ンド島に核兵器を製造、実験する施設を造り、しかもその未熟な上見栄を張るために事故を起こしました。彼らは20年前に私たちが屈服させたはずの「クラウン」のメンバーに違いありません。現在ローランド島は感滅状態です。この状況をわが国は見過ごすわけにはいけません。正義の名の下、霧島共和国の哀れな国民を解放するため闘い、政府を屈服させるべく戦おうではありませんか』
スピーカーから流れる拍手の音だけが響く。
−いったい何をいっているの?
長官が真っ青になり口を開く。
「各島のテレジア国民とローランド島の人々を飛行艇空港に集めろ。急げ。いつでも中立国に行けるようにだ。イリアス
総理大臣には私から話しておく。」
「だめです!ローランド島との通信は確保できません!」
長官は舌打ちしたが電話を手にとって話し始めた。
メーヴェさんは近くの女性と話している。
「あなたたち」
まだ頭が働かない私とテルは不意に聞こえてきた声にびっくりした。
「驚かせた?ごめんね。でもあなたたちは此処に居れない。直ぐにクロスポート港にいくわよ。」
金髪の若い女性のその言葉でわれに返った私たちはただうなずくことしか出来なかった。

「あの・・・核兵器の話・・本当ですか」
移動中テルが女性に聞いた。
女性は唇をかみ締め、躊躇しながら答えた。
「いいえ。私たちは核融合発電の技術しかもってない。」
「じゃぁあの閃光は・・・?」
テルが身を乗り出す。
「わからない。私たちの核関係の施設は全部地下60メートル以下にしか作られてないもの」
その人はただ前を向いて空港に向かっていた。
私はただぼーっと話を聞くことしかできなかった。

「くそ・・・嵌められたっ。」
防衛センターの一人がそう叫ぶ。
「わが国の・・秩序を守る仕組みが・・逆手に取られた・・」
「あぁ・・環境を維持するための入場制限が・・情報が少ない故に・・」
防衛センターの空気は最悪だ。
私はマイクをと取りこう言った
「いつまでそうしているつもりだ。早く状況を確認するんだ。」
皆が私を注視する。
「今できることをするんだ。暫くは軍をいつでも動かせる必要もあるだろう」
場内の幾人かがキーボードを打ち始める。
私は司令官を呼び、今後は任せると伝えた。
「ランバート長官は・・何処へ?」
「私はローランド島へ向かう。」


















ローランド核研究所:
近年できた新しい核融合研究施設。
石油資源の乏しい霧島共和国は電力の供給をほとんど自然に頼っているが、天候によりしばしば停電となることがあった。
そのため比較的核廃棄物の少ない核融合による発電を研究することを目的として建設された。











イリアス:
テレジア大陸の東南のケープコッド半島の国。
3次大戦以前より永世中立を宣言しており国土が豊か。銀行が立ち並び、その環境から世界一のリゾート地となっている。

クロスポート港
霧島共和国本島で最も大きい港。
空港と港が併設されており都心が近いことから物流の中心になっている。
最も古い港のひとつでもあり、空軍・海軍基地も併設されている。