小説  

 

 
       第10話2

霧島
戦記

 第11話2

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2650年 6/1 14:30 ローランド島上空 

「まだ生きてるか!これからもっと激しくなるぜ!」
操縦席でフロストが吼えている。
俺はローランド島へ潜入を決意して、降下の準備をしている。
PETの不規則すぎる機動はさっきまで俺を止めようとしていたレイをぐったりさせている。
戦闘機でも戦闘機動を訓練していた俺ですら酔いそうなものだ。
俺は降下にそなえ、ドア付近・・・窓の前のシートに移動する。
次の瞬間俺は窓からの景色に釘付けになった。
窓からはローランド島奪還を目ざしているのか、大規模な艦隊が遠くに見える。
一隻の船を中心に回転しているようだ。航跡がいびつな円形を作っていた。
その中の大きな船に白い煙が近づき、次の瞬間その船は爆発、大きな火の玉となり黒い煙を吐き出す。
その爆音はうるさい機内でも聞くことが出来た。
・・・・一隻の船の断末魔・・・いったい何人が犠牲になったのか・・・
空でも無数の煙と火の玉が浮いている。
編隊を組んだ戦闘機が近くを飛びぬけていった。
「!?・・・あれは・・・・」
「どうしたの・・?」
突然の叫びを不思議に思ったのかアヤが声をかけてきた。
「いや・・・・・なんでもない。」
アヤは不思議そうにこちらを見ていたがすぐに自分の仕事に戻った。
俺はすぐにさっきみた戦闘機を探し始める。
飛んでいる航空機の中に見覚えのあるカラーリングの戦闘機がみえたような気がしたのだ。
しかし既に低空に位置を変え、ローランド島へとアプローチしていたのでそれは無理だった。

「ついたぜ!」
しばらくしてフロストの声がヘッドセットから聞こえてきた。
「あぁ!帰りのこと忘れないでくれよ!」
俺は勢いよくドアをスライドさせ、地面スレスレに浮いている機体から飛び降りた。
そこは深い森だった。
「ハル!」
レイが叫んだ。振り返るとシートから身を乗り出しているレイが見える。
「必ず戻ってきてよ!絶対だからね!」
上昇する機体から聞こえる声に向かって手を振る。
・・此処で死ぬつもりはない。親父だって必ず帰ってきたんだ、俺にだって出来る。
「さて・・どこにいくの?」
「っ!?」
後ろから突然声をかけられ、驚いて振り向くとそこには色白の女性・・・・ナガセがそこに立っていた。
「あら・・・どうかした?」
「どうかしたって・・なんでナガセさんまで!?」
「聞いてなかった?」
しれっと傍のダンボール箱・・・中継基地で乗せていた箱の縄を解き始める。
かまわず俺は問い詰める。
「ここはテレジアの占領下なんですよ!?」
「正式には違うわ。それに初めて来る島じゃガイドがいるでしょ?」
「いや・・・まぁ・・そうだけど・・もし見つかったらどうするんですか!」
「気づかれなかったらいいんでしょ?」
箱のふたが開かれ、ナガセさんが中に手を突っ込む。
そして取り出されたものは・・
「あ・・アサルトライフル・・・?」
「そう。霧島防衛軍の正式アサルトライフル、AAR-34。麻酔弾と7.62ミリ弾を使うことができるわ。あなたにはこれ」
そういって再び箱の中に手を入れ、何かを取り出す。
渡されたものは拳銃とそのホルスターだった。
「な・・・・・・・な・・どこからそんなものを・・・」
「それも麻酔弾を使用できるように改造されているわ。使い方は・・」
俺は言い切らないうちに弾倉を押し込み、セーフティを解除してスライダーを引き撃鉄を起こす。
ナガセさんはそれを見て微笑む。
「大丈夫そうね。あと・・これを」
そういってポーチとポータブルオーディオのような機器を渡される。
「これは?」
「予備の弾薬とマガジン、それと通信機。周波数はセットしてある。私とフロストと繋げられるわ。」
あっけに取られている俺をよそにとんとん拍子で話をすすめてられていく。
俺は観念して答えた。
「・・まずは例の”雷”の正体が知りたい。」
「じゃぁ・・・・山に登るわよ。」