小説  

 

 
       第11話1

霧島
戦記

 第12話1

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2650年 6/1 13:20 ローランド島沖 戦艦”霧島”

『敵性航空機さらに接近!』
「!・・・・ミサイル発射を確認!目標は・・・僚艦・・・・巡洋艦”あたご”!」
くそっ・・・・あたごは全滅した先行隊の救助中なのに・・・っ
「そのまま目を離すな!MI-3(対ミサイル迎撃ミサイル)、CIWS(6連装機銃)撃ち方用意!あたごを守れ!」
『艦長!敵ミサイルをさらに確認!方位0-1-0、おそらくトマホークです!』
「全艦に通達!密集せよ!繰り返す。全艦密集輪陣形!あたごを中心に展開せよ!」
『ミサイル接近!距離800!』
「CIWS撃ち方はじめ!弾幕をはるんだ!総員対ショック用意!」
『4番CIWS装填手スタンバイせよ!』
艦内には外からのモーター音がとどろき始める。
側面の窓から白い矢が低空で接近するのが見えた。
大量の金属弾が光を放ちながらその矢をめがけ海面に吸い込まれていく・・・
と、次の瞬間窓には炎と煙が広がる。私は特殊強化ガラスで割れることはないとわかっていても目を閉じてしまった。その火薬のにおいと爆風を感じられる気もした。
「各部損傷確認!急げ!」
私はオペレーターが状況をアナウンスする前に叫んだ。
『・・・大丈夫です!各部とも損傷、負傷者もありません!』
『次きます!』
『3時、10時の方向より対艦ミサイル・・計10本!距離2000!』
どうやら敵さんは相当な数を投入しているようだな・・・これだけの波状攻撃を仕掛けるには少なくとも15隻・・いやもっといる・・
「完全に補足されているぞ!ジャミングは何をしている!?」
ジャネットが怒鳴る。
『護衛艦”クラリス”、”ジーク”より入電!”我、敵攻撃機ヨリ攻撃受ク。マストニ被弾、電子戦闘ハ困難ナリ"、ジークからは"我、艦橋ニ被弾、作戦行動ハ困難ナリ”!』
『PET隊は損害はないものの敵戦闘機の影響で支援は難しい状況です。』
後方に逃れた護衛艦も捕らえられていたとは・・・私たちは完全に”盾”を失ったようね・・
「とにかく降りかかる矢をなんとかして。MI-3全弾射出しナンバー1・2・4・8を迎撃、CIWS目標ナンバー3・5・6・7!それぞれ個別に対応して!」
『MI-3目標セット完了。ナンバー1・2・4・8を迎撃します。』
『MI-3,4本射出!』
『迎撃予想まで10秒!・・・・5,4,3,2,1,今!』
『僚艦MI-3迎撃併せ6本を迎撃確認!』
オペレーターが少しうれしそうな声をだしたが、すぐに別の方向から叫び声があがる。
『3時方向より尚3本接近中!距離700です!』
「弾幕を張れ!これ以上救助艇を出す余裕はないぞ!」
『総員対ショック用意!』
少しの間の後船が大きく揺れ、赤い照明が点滅し、モニターが乱れる。被弾したか・・・?
「各部損傷確認!」
『・・・・・迎撃成功!全弾回避しました!居住区、食料庫に損害が出ていますが数名軽傷を負ったのみです!』
艦内で控えめな歓声が上がる。
「みなよくやってくれた。引き続き航空部隊への支援及び敵艦船への攻撃を行う。敵艦船への攻撃はまた私が指示する。この間を利用し、人員交代を行う。みなご苦労だった。」
そういうと艦内の空気が少し和らぎ、交代のため景色がかわっていった。
時計は既に15:00にさしかかろうとしている。
戦闘開始から早4時間・・・じわりじわりと我が戦力は喪失されていく・・
私たちを守る電子的は支援はもはや風前の灯で、航空隊は制空権をなんとか確保している状態。
「・・・・副長。」
「何でしょうか・・艦長」
「本部より支援の話はあるか?」
「カラクニ島を出航した第1艦隊が支援にくることになっています。到着予定は2010時とのことです。」
「2010時か・・他には?航空部隊はどうなっている。」
「本島クロスポート航空基地から先ほど、制空隊と攻撃隊、あわせ6機4隊が飛び立ったと連絡がありました。予想到着時刻は1600時です。」
バックアップにしては数が多い・・・・本隊の前衛・・・ね。国会にしては早い行動ね。
「上陸部隊は無事か?」
『輸送艦はなんとか全艦健在です。さっきからはやく上陸させろとうるさくいってきています。』
敵の第3波をかいくぐったようだ・・つかの間の休息が訪れる。
少しだけ緊張がほぐれたのか、喉が渇いていることに気づいた。
・・・艦隊の損害は巡洋艦1隻、駆逐艦4隻。乗員に死者が出ているとだけ聞いたが下手をすればもっと二度と戻ってこれ

ない連中がいたはずだ。
敵の損害はジャミングで確認できていない。
本部からの情報では確認できるのはテレジア強襲部隊で多くとも巡洋艦及び護衛艦6隻だけ。空港は退却寸前に退却部隊によって破壊工作が行われ使用不可、航空部隊も少数で影響なし・・・のはずだった。
しかし作戦海域に突入してみれば巡洋艦及び護衛艦が少なくとも15隻、航空機の数、侵攻方位から空母の存在まで見えてきた。
制空部隊もこの状況では空中給油は無理だろう。そろそろ潮時かもしれない。
『水中戦闘部隊第2師団第6艦隊旗艦”ホエールハンター”から入電!”我、作戦海域ヘト突入セリ。貴艦隊ヲ支援スル。攻撃目標ヲ指定サレタシ”以上です。』
うれしい知らせだ。”沈黙の艦隊”とはな・・
「通信手。ホエールハンターへ返信して。”支援ニ感謝スル。願ワクバ本艦ヨリ南30カイリ地点ニ移動サレタシ。”以上」
・・・勝負に出るか・・
「副長。兵装、クルーに損害が出ている艦、救助を行った艦は今のうちに本島に引き返させておいて。」
「・・しかし・・それをすれば我が艦隊は我が艦、護衛艦”キッド”・”ブレラ”、巡洋艦”高雄”・”ミッチェル”、水雷戦隊は駆逐艦”フッド”・”シーカー”・”あきづき”・”ゆきかぜ”のみとなります。元戦力の50%ですよ?」
「わかっている。それだけいれば十分だ。敵の追撃もあるだろうし、これ以上”彼女”たちを痛めつけたくない。」
「・・・・了解しました。しかし・・私たちはどうするのです?」
その問いに私は笑みを浮かべる。
「いい案がある。上陸部隊にも舞台を用意してやろうじゃないか。」